研究検査科 [診療について]

■ 検査技師の仕事

私たち臨床検査技師は、血液、血清、尿、さらには喀痰や便などから、酵素や電解質、たんぱく質や細菌などを検査して、臓器の異常や栄養の状態、細菌やウイルスに感染していないか、炎症を起こしていないか、あるいは心電図や脳波などの体から発する微弱な電位を検査したり、呼吸の状態を調べたりします。

■ 専門病院の検査項目

私たちが勤務する八雲病院は神経筋の専門施設ですので、検査科においても他の病院にはみられない独特な検査項目があり、これらの検査を簡単にご紹介させて頂きたいと想います。

肝臓機能の異常を発見するために血清中のGOTやGPT(いまではAST、ALTと呼ばれています)、腎臓機能の評価としてクレアチニンが多く使われます。しかし、筋ジストロフィーではこれらの検査値の信頼性が低くなる時期があります。筋肉が壊れる病気であるため筋肉中のGOTやGPTが血清中に入り込み検査値を押し上げます。特に筋肉の崩壊が激しい時期では、GOT,GPTは中等度異常まで値が高くなる事も珍しくありません。ですから肝障害を特異的に評価できる新たな検査法が必要となります。また、腎機能検査でよく使われるクレアチニンは筋肉中で代謝されて産生されます。クレアチニン値は筋肉の量に比例しますので、筋肉量が著しく少ない成人では、検査値は低く、腎機能を正しく評価できなくなります。

■ 血清ICDH(イソクエン酸脱水素酵素”NADP系”)

この酵素が肝障害評価に有用なことは広く知られおり、以前は保険点数の適用もあった有名な項目です。ICDHの測定感度はあまり高くないのが「たまにきず」ですが、筋肉の崩壊による影響を受けず、特異性に優れた有用な検査です。しかし現在では、測定試薬も販売停止になってしまい、事実上「名前だけは知っている昔の検査」になるところでした。当科ではこれを期に、検査試薬を自家調整し、生化学自動分析装置での測定を施行しています。感度は以前の検査キットと同等ですが、試薬の安定性は格段に向上し、臨床からも一定の評価を得ています。

■ 血清Cys-C(シスタチンC)

最近欧米で腎機能評価での有効性が認められた検査です。Cys-Cはシスティンプロテナーゼインヒビターのひとつで、全身の細胞から一定量産生されるため筋肉量によるばらつきはありませんし、β2−マイクログロブリンのように感染や悪性腫瘍など腎臓以外の影響をほとんど受けません。このたび、保険の適用が認められ、筋ジスの腎機能評価で活用が期待される項目です。

■ BITI (Brething intolerance index)

呼吸に問題のない人にとって「呼吸に携わる筋肉が疲労する」というイメージはなかなか浮かんでこないと思います。しかし、神経筋疾患の患者さんは少ない筋肉で呼吸運動をしているため、一つ一つの呼吸筋にかかる負担は次第に大きくなり、疲労しやすくなります。筋肉が疲労してしまうと、本来発揮できる力も出せなくなり、呼吸状態が悪化する可能性が高くなります。BITIは、患者さんの呼吸が疲労状態に陥りやすいかどうかを示す指標で、非侵襲的陽圧換気(NPPV)の開始や使用時間の判断材料の一つとして患者さんに示され、活用されています。

■ 神経筋疾患のための睡眠深度解析

神経筋疾患の患者さんの呼吸不全の初期症状の一つとして、よく夜間の頻回な寝返りがあります。そのような患者さんの睡眠の状態を調べると、REM期の酸素飽和度の低下と覚醒を何度も繰り返したり、CO2が上昇したり、脈が速くなっており、熟睡とは言えないことがあります。後日、鼻マスクや鼻プラグによる人工呼吸(NPPV)を導入後に再検査すると、頻回の低酸素や覚醒が改善されていました。慢性的な不眠は集中力の欠如やいら立ちなど、様々な日常活動の問題につながることがあります。しかし、成長期の神経筋疾患の睡眠障害の対策や影響については、まだまだ未知の部分が残されています。ですから、私たちは睡眠深度解析を通して、病気の進行と睡眠の関連について理解を深めて行きたいと思います。

このように、一般医療で有用性が認められた検査でも病気によっては信頼性が失われる場合もあり、専門性に対応した検査体制作りが必要と考えています。

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